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ジョジョ4部小説『The Book』で千帆が父・ 照彦を殺害した動機は? [本・コミック]

いまさらですが、ジョジョ4部のノベライズ
『The Book』(乙一著)を読みました。

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

  • 作者: 乙一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/11/26
  • メディア: 単行本


初版を買ったまま、なぜか放置してました。

いや、何度か読み進めたことはあるのですが、
物語が鬱々としているのと、なかなか仗助達が
登場しないので、途中で脱落してしまったの
ですよね。

最近、友達に『The Book』を貸して欲しいと
言われ、せっかくなので読んでみるかなーって
思い立ち、ようやく読破しました。

総じて、おもしろかったですよ。
著者のジョジョ愛があふれていて、
ジョジョ好きであればあるほど、好きに
なれる作品かもしれません。

キャラクターが破たんすることもなく、
世界観が壊れることもなく、
原作4部のアフターストーリーとして、
十分に成立しています。

そんな物語の中で、唯一、腑に落ちなかった
ことがあるので、それについて、掘り下げて
みたいと思います。
(以下、ネタバレ含みます)



双葉 千帆はなぜ父・双葉 照彦を殺したのか?


物語の冒頭で、千帆が照彦を刺殺したことを
告白しているので、それは確かなことです。

ただ、その動機がイマイチよく分からなかったので、
自分なりに考察することで、この本の感想に代えたい
と思います。

まず、父・双葉 照彦は、娘である千帆を愛して
いたし、娘の成長が自分の生き甲斐だと思っていた。
それは、まぎれもない、事実。

また、千帆も、両親が離婚したとはいえ、父親の
ほうに身を置いていたことからも、父娘の関係は
良好だったように思える。

その親子関係に亀裂が生じたのは、やはり、
蓮見 琢馬の存在だろう。

千帆は琢馬の恋人になり、琢馬を愛していた。
(琢馬には、愛情は無かったようだが)
そして、琢馬の子供を身ごもった。

それゆえに、父・照彦に対し、恋人である
琢馬を紹介し、二人の交際を認めてもらおうと
思った。

おそらく、既にお腹の中に二人の子供がいると
いう事実も、カミングアウトするつもりだったと
思う。そういう秘密も正直に話し合えるくらいに
親子関係は良好だったから。

その愛情・信頼関係が、一変して、殺意に
至ってしまった理由は何か?

一つは、千帆が、織笠 花恵の不審な事故死に
ついて、継続して調べていたこと。
父・照彦との関係についても、知っていた
可能性が高い。
(離婚の原因が織笠 花恵にあると、思っていた
 かもしれないので、父に対して、何かしらの
 疑念を抱いていたかもしれない)

もう一つは、父・照彦に、琢馬との交際を
認めないと言われたこと。

優しい父なら、琢馬との交際を許してもらえる
と思っていたのに、絶対にダメだと言われたら
それはショックだろうとは思う。

でも、それだけなら、親子の縁を絶交し、
家を出て琢馬と二人で暮らす、という思考に
なるはず。
(別に、父・照彦を殺害する必要はない)

父・照彦を、自らの手で殺害し、生かしては
おけない、という思いに至った心理状態とは
何か?

考えられるのは、
千帆自身が父・照彦に殺されそうになった
からではないか?

父・照彦は、千帆が連れてきた琢馬と対峙し、
琢馬に過去の悪事がすべてばれてしまった事を
知った。

しかも、
琢馬が自分と飛来 明里との間に出来た子供で
あることを、知ってしまった。

そして、織笠 花恵を殺害したのも、琢馬の
仕業であることが分かった。

おまけに、千帆を人質のように取られ、今後
どんな脅しをかけられるか分からない。

さらに、そんな忌々しい息子(琢馬)が自分の
愛娘を奪い、さらには、子供まではらませた
という事実を、千帆から突き付けられ、逆上した
ことは想像にかたくない。

おそらく、千帆もこれまで見たことのない、
どす黒い、照彦の形相と感情を目の当たりに
したのだろう。

今すぐ、子供をおろせ!
琢馬とは、二度と会わせないようにしてやる!
(スタンド能力で)
と迫られたに違いない。

それでも反抗する千帆に対し、照彦がなんらかの
危害を加えようとしたら・・・。

そう、例えば、自宅に火を放ち、心中を図ろう
としたとか。
(自暴自棄の挙句、どうせ死ぬなら愛娘も
 道ずれに・・・)

千帆は自らの命だけではなく、お腹の中に
宿った琢馬との子供を守るために、
父・琢馬を包丁で刺したのではないだろうか。

そう、正当防衛だった。

明確な殺意ではなく。

って、ここまで書いていて、あれ?と思った。

確か、物語の冒頭で、千帆は愛する父の胸に
包丁をつきたて殺害したとあったよね。

しかも、台所にあった包丁を持ち出して。

ということは、正当防衛というよりも、
明確な殺意があったということだよね?

うーん・・・

再度、考察。

琢馬が帰った後、千帆と照彦との間に
何があったのか?

照彦は、千帆が身につけていた
「黒い琥珀」のネックレスを見て、
琢馬が自分と明里との間にできた、あの
子供だと悟り絶望し、

「暗闇だ・・・」

という言葉を発した。

そんな父・照彦の気持ちも知らない千帆は、
琢馬との間に身ごもったお腹の中の子供の
ことをカミングアウトする。

狼狽する、照彦。

千帆に、琢馬との交際は認められないし、
その子供を産むことも許されないと告げる。

「どうして!?理由を聞かせて!」

と詰め寄る千帆に対し、照彦は、
琢馬が千帆の腹違いの兄だと告げる。

そんな・・・バカな・・・・

と、逆に絶望する千帆。

それでも構わない、私はこの家を出て、
琢馬と一緒に暮らす。
子供も産む!

と突っぱねる千帆。

そんな事はさせない!と、照彦と千帆が
もみくちゃになる。

その場所が、たまたま台所であり、
自分の身(お腹の中の子供)を守ろうと、
照彦の胸に包丁を突き立て、殺害・・・。

うーむ。

そんなところかなー。

もしかしたら、照彦と千帆の口論の中で、
織笠 花恵の不審な事故死について、
千帆が照彦に詰め寄った可能性もありますね。
母親との離婚の原因だとか、織笠 花恵を
殺害したのは、照彦なんじゃないか?とか。

もし、織笠 花恵を殺したのは、琢馬だ!と
照彦が告げ、千帆も奴に騙されているんだ!
などと言われたら、愛する人を侮辱された
千帆に、殺意が芽生えても不思議ではない
かもしれませんね。


ただ、
自宅に火を放ったのは、千帆ではなく、
照彦だと思うんですよね。

父親を刺した千帆は、怖くなって、
逃げ出したと思うんですよ。

残された照彦は、死にかけているわけですが、
最後の力を振り絞り、家に火を放った。
(台所にいたので、コンロも近くにあったはず)

なぜ、火を放ったのか?

それは、愛する娘に、殺人の罪を着せたく
なかったからではないでしょうか。

この家ごと、自らも灰になってしまえば、
刺された傷も、刺した包丁も、すべての
証拠が隠滅される。
娘が疑われることはなくなる。

そういう、愛情が、最後にはあったのでは
ないかなと思います。

いや、そう思いたい。


琢馬が照彦を殺害するように、千帆に仕向けた
のではないか?とも考えたのだけど、
琢馬の復讐は、腹違いの妹である千帆に、
自分の子供をはらませ、それを父・照彦に
突き付けることで、最悪の苦悩(生き地獄)を
味わわせるということで完結しているわけなので、
照彦を殺害してしまうと、逆に復讐の効果が
薄れてしまうのですよね。

なので、千帆が照彦を殺害してしまったのは、
琢馬にとっては、想定外のことであり、
誤算だったのではないかと思います。
(ただ、その事実を知る前に、琢馬は死んで
しまうので、復讐を果たしたという想いは
失われていませんが)


ところで、父・照彦のスタンド
「黒い琥珀の記憶」(メモリー・オブ・ジェット)
は、ある領域に、他者を侵入させなくする能力
でした。

照彦殺害の容疑で、千帆が警察から追われて
いるのに、うまく逃げおおせているのは、なぜか?

そこはやはり、
父・照彦のスタンド
「黒い琥珀の記憶」(メモリー・オブ・ジェット)
と同じような能力が千帆(もしくはお腹の中の子)
にも、備わっていると思ったほうが、自然ですよね。

もしくは、父・照彦の残留思念で、千帆を何者
からも守ってあげたい、という想いが、
「黒い琥珀の記憶」(メモリー・オブ・ジェット)
の能力を継続させているとか・・・?

ジョジョの中には、自身が死ぬことで発動する
スタンド能力もあるので、その類かもしれませんね。


The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

  • 作者: 乙一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/11/26
  • メディア: 単行本




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ま。

千帆はあのポストカードの風景とそっくりな場所に帰るような事を言っていた。
草原と二頭の馬。
どう繋がっているのだろう
by ま。 (2018-01-08 20:56) 

サナギン

● ま。さん、コメントありがとうございます(^^)

千帆にとって、二頭の馬は、父・照彦と兄・琢馬の
姿をだぶらせていたと思うんですよね。
本当は、照彦と琢馬に和解してもらって、三人で
仲良く暮らしていくことが望みだったのではないで
しょうか。
by サナギン (2018-01-09 09:41) 

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