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「この世界の片隅に」 拡張版(幻の150分版)に期待したい! [アニメ]

「この世界の片隅に」

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

いま、ちょっと話題になっている映画。

その原作の漫画を読んで、映画を観たので
感想を書きますね。
(ちょっと長いので、時間がある時にでも
 読んでください)

まず、漫画を読んだ後の感想から。

うーん。

何か、感想を、と思ったのですが、
うまい言葉が浮かんできませんね。

この漫画を読んで、
僕が子供の頃に、祖父母や両親から聞いた
戦争の話を、ふと思い出しました。

戦時中は、飲み水にも困って、水たまりの
泥水を布でこして飲んだとか。

空襲警報が鳴ると、家が空襲で燃やされる
恐れがあったので、みんな多摩川の土手に
集まったとか。
(本当かどうかわからないけど、空襲は
 人が住んでいる市街地が狙われていたので
 多摩川の河川敷は安全地帯と言われていた
 そうです)

焼夷弾は、花火なんかよりも、もっと
明るく、まぶしかったとか。
それゆえ、恐ろしくもあったとか。

赤紙がきたら、兵隊にならなければ
いけないが、栄養失調で、たまたま兵役を
逃れたとか。

ある日、ヒゲずらの、身なりの汚い軍服を
着た男の人が自宅に来て、自分を抱き上げて
くれた。それが、実は戦争から戻ってきた
自分の父親の姿だったとか。

・・・。

身内から聞く戦争の話というものは、
断片的ではありますが、より現実味を
持っている情報で、それは、テレビで
見る戦争とは、また違ったもので、
そこには、生活があって、その上に
戦争があるんだということを、漠然と
感じていたように思います。

つまり、自分の住んでいる現在が、
そう遠くない過去の戦争という歴史と
つながっているんだ、という認識というか
恐怖感みたいなものを、肌で感じていた
のですね。

ただ、戦時中の生活というものが、実際に
どういうものであったのか、という事は、
学校の授業で学んだり、何かしらの
情報を得ているとは思うのですが、
知識としては知っていても、実際のところ、
頭では分かっていなかった、と改めて
思いました。

それを「この世界の片隅に」という
漫画では、きちんと、丁寧に描かれて
いて、ある意味、戦争とはどういう
ものかということが、等身大で理解
できた気がします。

当たり前のように、人々には幸せな
生活があり、それが戦争によって、
少しずつ、少しずつ脅かされていく。

最初は少しずつの変化だから、
気が付かないのかもしれないけれど、
戦争の目的が、国を守るため、
しいては、自分たちの幸せな暮らしを
守るためと、信じて疑わない人々。

だから、「戦争=仕方ない」という
あきらめが、流行り病のように、
気が付かないうちに蔓延していく。

そういう、
戦争の狂気というものが、うすら寒く
感じられます。


漫画の中では、ただ単に、戦争が悲惨な
ものであったというだけでなく、
その状況下であっても、人々はユーモアを
保ちながらお互いに支え合って生きていた
という暮らしが描かれています。

実際に、戦争に合われた方々が、ユーモアを
保てていたかどうかは定かではありませんが
戦争の中にも、生活があったということは
事実でしょう。

ちなみに、戦争ものの漫画で僕が所有して
いるのは、水木しげる先生の
「総員玉砕せよ!」
という太平洋戦争を描いた漫画です。

あの漫画の中でも、過酷な戦地に
赴く兵隊たちは、時として怠惰で、
上官の愚痴を言い合ったり、戦争をよし
としない人もいたりして、とても
人間らしく描かれています。

それらを通してみても、日本国民が
一丸となって、戦争をしていたわけでは
なく、むしろ、誰も望んで戦争なんて
しているんじゃない、という虚しさと、
それでも戦争をしなければならないという
やるせなさが、伝わってきます。


次は、映画を観た後の感想です。

原作で物語の筋書きは知っていたものの、
それらが色彩と音響を持って描かれる
世界は、実に生々しく、身動きが出来ない
ほどでした。

僕の隣の席に座っていた、仕事帰りの
サラリーマンの男性も、途中から嗚咽が
止まらないほど泣いていました。

いや、映画館のあちこちで、すすり泣く
声が聞こえていました。

僕も、観終わった後は、しばらく放心状態
でした。

映画館を出ると、ちょうどクリスマス
シーズンということもあり、街中では
イルミネーションが輝いていましたが、
とても虚しく感じました。

笑いあって食事をする人も
手を繋ぐ恋人達も、何もかもが
なんだか作り物みたいで・・・。

まるで、この世界が絵空事のように
思えるほど、あの映画の中で描かれた
世界と、この現実の世界はかけ離れていて。

ともすれば、目の前の景色が、吹いたら
消えるロウソクのともし火のように思えて、
背筋がスウッと薄ら寒く感じるほどに、
平和というものが、いかにアンバランスな
均衡の上に成り立っているのかを、
マジマジと感じさせられました。

映画の中で、主人公の少女「すず」は、
「この世界が歪んでいる」と言っていたけど、
現在のこの世界も、歪んではいまいか?

そんな風に思えてしまうくらいに、今の
平和が薄っぺらく思いました。

毎日、決められた時刻に会社に通い、
机に座ってパソコンと向かい合う日々。

自分は、この平和を維持するために、
何か貢献できているのだろうか?

あの、戦争で苦しんできた人々の、
平和を願う気持ちの延長線上に、
しっかりと生きているのだろうか?

産まれた時から「平和」だったので、
その平和を当たり前のように享受し、
それを失うことの怖さや、失うかも
しれないという危機感が薄れてはいまいか?

そんなことを、しばらく、悶々と
考える日々が続きました。


「この世界の片隅に」

この原作漫画なり、映画なりを、
クリスマスからお正月にかけての、
浮かれ気分なシーズンにお勧めしていい
ものかどうか悩みますが、お金を払って
観る価値はありますよ。

エンターテインメント作品ではないので
観終わった後に、スッキリとしたり、
爽快感みたいなものは味わえないのですが、
世界観を変える破壊力みたいなものは
あるかと思います。

僕が小学生の時に、「はだしのゲン」を
読んで、夢でうなされるくらいに
トラウマを感じたけれど、そういう
恐怖って、子供の頃に知っておくべき
だとも思うんですよね。

だから、少なくとも、僕の子供たちには、
何かの機会に、原作漫画を読ませようかと
思います。

最後に、「この世界の片隅に」の
映画と原作漫画の違いについて。

映画と原作漫画、どちらも素晴らしい
のですが、映画では尺の関係上、
原作で語られているエピソードが
端折られています。

映像を観た限り、おそらくそのエピソード
を盛り込もうとした形跡は観て取れた
ので、編集過程で泣く泣く、削らざるを
得なかったのだろうなぁ~と思いました。

映画では、
すずとその夫の周作、
すずと幼なじみで水平の哲、
すずと遊廓の遊女リンの関係は描かれて
いましたが、周作とリンの関係は、
描かれていませんでした。

端折られたエピソードは、その周作とリンの
関係であり、それがあるがゆえに、
すずが周作とリンに焼きもちを焼くことで
周作への想いに気が付くのだし、あの
すずと幼なじみの哲の一晩のエピソードが
生きてきます。


昨日12/21に、本映画のプロデューサーが
ツイッターで「拡張版やりますよ。」と
ツイートされていたので、泣く泣く
削られたシーン30分間を含めた
“幻の150分版”の制作も、どうやら
決定したようです。

来年2017年の夏、終戦記念日に向けて
公開くらいのスケジュール感でしょうか。
楽しみですね~

戦争が激しくなっていく中で、
すずの周作に対しての愛情も育まれて
いくという点が、この作品の魅力だと
思うので、映画を観た方は、ぜひ原作の
漫画のほうも読んでみてください。


笑顔を絶やさず
家族が寄り添って、一つ屋根の下で
生きていけることの幸せ。

それが、どれだけかけがえのない
価値あるものかを、改めて認識し、
この平和が続くことを祈らずには
いられません。


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